ARTIST STATEMENT

幼い頃から母親の趣味である美術画集に囲まれて育った私は工作や絵画に没頭した少年時代を送った。

ものづくりを続けながら成長し、その過程で靴に興味を持ち地元のとある革靴店に毎日のように通うようになった。
そこに飾られた革靴の佇まいに魅せられて靴づくりの道に飛び込んだ。年を重ねるごとに増す「道具」としての魅力よりはむしろ、機能美を兼ね備えた靴の「造形美」に魅了された。

それから靴職人として東京とヨーロッパで10年間修行した。オーストリアのウィーンでは、靴工房での修行の他に芸術家のアトリエや美術館をめぐる日々を過ごし、息を吸い込むように芸術を吸収していった。そして「自分の靴もいつか芸術品として美術館に飾られたい」と思うようになった。

帰国した2011年に自分の工房を構え、ビスポークの靴作りを続けながら、日本の芸術家や工芸家の下で4年間学び表現の幅を広げた。20代のすべてを掛けた独立までの10年間は、技術を追い求める辛く長い修行の日々だった。自分の工房を構えてからの8年は、独自の表現を追い求め高揚しながらも苦悩する日々となった。

普段のビスポークの靴作りとアート作品製作。二つの世界を行き来する私の創作活動の基礎は、伝統的な製法による丁寧な技巧的な仕事である。そして両者にはポジティブなフィードバックもある。ビスポークの靴作り技術こそが私の頭の中にある作品イメージの具現化を可能にしているし、逆に作品製作で得た全く新しい技術やアイデアがビスポークの靴に落とし込まれることも多い。

現在の私の靴のアート作品は日本の伝統技術をはじめ、革の廃棄物、金箔、そして「錆」などの新しい素材や技法を積極的に取り入れている。それは他ジャンルの素晴らしいアーティストと出会う機会が増え、私の思考が柔軟に変化したからかもしれない。私はこれからも、道具としての革靴を私の技術やアイデアで昇華し、靴の造形美を徹底的に追求した「芸術」というあらたな存在価値を探求していきたい。そこには世の優れたプロダクトデザインにはない、私にしか表現できない独特な世界観が宿っていると信じて。。。