新しい「日本の靴」を作るため、私たちは今なお人々に読み継がれている作品「遠野物語」の舞台である、岩手県遠野市へと向かいました。
遠野は、日本の原風景が残る地であり、昔ながらの職人文化も息づいています。
私たちは、ここで94歳の職人から数日間にわたり藁の草履や靴作りの指導を受けました。
その土地の材料を使って、その土地に適した履き物を作る。この体験を通じて、私たちは日本の履き物文化の本質に触れたような気がします。
次に訪れたのは島根県。島根は、日本の民藝運動と深い関わりを持ち、陶芸・金工・木工といった工芸が今も息づく地です。
鉄器や銅器などの金工品、日常使いの美しい木工品も、職人の手で受け継がれています。
さらに、島根は出雲大社を擁する土地でもあります。神話の舞台でもあるこの地には、日本の伝統文化や精神性が深く根付いています。
また、かつてたたら製鉄が盛んに行われ、良質な鉄が全国に供給されていました。この鉄づくりの技術は、刀剣や農具だけでなく、現代の工芸にも通じるものがあります。
遠野と島根――日本のものづくりの原点ともいえるこの二つの地で得たインスピレーションをもとに、私たちは新しい「日本の靴」を形にしていきます。